書籍の制作に携わる出版業界に、憧れを抱いている人は多いことでしょう。しかし出版業界は今低迷に陥っているとされており、入社に不安を抱く人も多いです。
そこで今回は、出版業界が低迷になっている理由、そして今出版業界が求めている人材をご紹介していきましょう。出版業界の採用事情にも触れていきますので、気になる方はぜひご覧ください。
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出版業界は低迷が続いている
出版業界は小学館や集英社、講談社といったような書籍を制作する出版社が卸の取次や、小売りの書店によって書籍が購入者へとつながり成り立つ仕事になっています。これは「販売委託性」と呼ばれる特殊な流通網になっており、そんな出版社・取次・書店というのは近年どれもが低迷となっているのです。
書籍や雑誌の販売高は年々減少傾向を見せ続け、市場規模は縮小傾向にあります。そもそも出版市場というのは1997年から縮小が始まっている業界です。そこから20年以上も続く不況ですが、それが今新たな局面を迎えています。
出版物が減少しすぎたことで、運送会社が出版物を運べないという危機にも直面しているのです。これにより出版業界の影響は業界内だけではなく他の業界にもダメージを与えるほど深刻化してきています。
また、どんどん小さくなる市場は出版社の創作意欲も減退させていると噂されているそうです。『Ziper』や『メンズジョーカー』といったファッション誌に、『月刊YOU』や『花とゆめ』といったコミック誌は休刊しています。創刊誌はどんどん数を少なくしており、廃刊になってしまった書籍も後を絶ちません。
では、このように出版業界が低迷をもたらした理由は一体何なのでしょうか?
電子書籍がもたらした出版不況
減少傾向の出版業界にさらなる追い打ちをかけた正体となるのが、電子書籍です。電子書籍の売上高は年々好調で2016年ごろから急速にその勢いを延ばしてきました。電子書籍には紙媒体では得られないメリットが多く存在しており、スマホやタブレットといったデバイスでいつでもどこでも見られるという点から、非常に便利なコンテンツとなっています。
さらに書籍自体がデータになっているためかさばらず、しまう場所にも困りません。その理由もあってか電子書籍は2017年から2018年の1年間で12.0%もの売上高を誇りました。
そして電子書籍が伸びた理由には他にもあり、2018年11月に大手出版社が連携を行い、海賊版対策を行ったのも影響しているとされています。これにより電子書籍はさらに売り上げを伸ばし、2020年6月現在、新型コロナウイルスの影響で自粛生活を余儀なくされた多くの人が電子書籍を活用し、今もなお拡大を見せ続けています。
また、出版業界の低迷には電子書籍のみならず若者の本離れもあるとされています。最近はネットが普及したことによりネット上でできるあらゆる娯楽が若者を楽しませています。活字を読むという行為は人によっては苦痛を感じてしまうでしょう。
それが活字離れを起こしている若者であればなおさらです。
そして本離れというのは若者だけではなく、年配層にも見られます。年配層もパソコンやスマホを使う時代であり、どんどん多くの人の本離れは進んでいるのです。
低迷が続く出版社は人気のない企業なの?
出版業界は低迷が続いているとなると多くの人が出版社は人気がないのでは?と考えることでしょう。しかし、出版社というのは人気のない企業ではありません。むしろ年々倍率が上がっている傾向を見せており、その人気の高さを感じさせてくれます。
なぜ倍率が高くなっているかというと、それは出版業界が中途を多く採用していることにあります。
経験者が優遇される出版業界
出版業界では決められた日時までにしっかりと仕事をこなす必要があるため、経験者といった実力を兼ね備えた人が適任となります。そのため1回出版社に勤めて3年ほどの経験を重ねれば、他の出版社でも活躍しやすいのです。
そのため、出版社に勤める人はぐるぐると出版社を渡り歩く傾向にあります。ただ、すぐに人手が欲しいとなった場合は活躍を期待できる中途採用に頼ることが多くなってしまい、結果として新卒よりも中途の採用に力を入れてしまうのです。
しかしながら出版社も中途採用にばかり頼っているわけではありません。時には新卒が持つトレンド力や大きな発想力を駆使しなければ、今後出版業界が生き残り続けられないとも考えています。現状としては中途採用を多く行う出版業界なため、新卒は何十倍もの倍率を潜って入社に漕ぎつく必要があります。
出版業界への入社を希望している人は厳しい倍率を乗り越えるために何に注意すれば良いのでしょうか?
出版業界が欲している人物とは?
出版業界への入社を検討しているのであれば、出版業界が欲している人物を知っていくべきです。出版社の採用担当者が、今最も採用したいと考えている人物は以下のような人です。
とにかく本が好き
“とにかく本が好き”、これは出版社に入社するにあたって絶対に必要な条件です。本が好きでなければ、本に対する情熱を注いで制作することもできません。
出版業界の中でも出版社となれば特にたくさんの仕事を抱えます。本の完成度を高めるために様々な努力も強いられます。
“本が好き”という気持ちがあれば、いかなる苦労も乗り越えられるので、出版社への入社を希望するにあたって非常に重要となってきます。
集中力がある人物
出版業界の仕事は細かく書かれた字が関係してくる仕事であるため、一字一句間違いがないように見る集中力も問われます。特に編集や校正を行う業務に携わるのであれば、その集中力は人一倍必要になってきます。
万が一文章や装丁などに間違いがあれば出版できないことにもつながってしまうので、注意しましょう。また、編集や校正では集中力同様に正しい日本語が身に付いているかどうかも重要なポイントになってきます。
トレンドに敏感な人物
出版業界はトレンドに大きく左右する業界です。これは絶対条件というよりも適性があるということに近いですが、世間が今求めている情報を的確に乗せた本を出すためには重要なものになっています。
常日頃様々なものにアンテナを立ててトレンドに敏感である人は、出版業界にも向いています。トレンドを把握できる人物がいることで出版社は売れる書籍の販売につなげられます。
コミュニケーション能力が高い人
出版業界というのは情報を載せるために様々な人と関わりを持たなくてはならない仕事です。そのためコミュニケーション能力が高くなければ、より完成度の高い書籍を作り出すのが難しくなります。
色んな人と連携を取りながら良いものを作り出すことは、非常に感動を覚えます。コミュニケーション能力が乏しいと感じている人は、今から人との関わりに注意しコミュニケーション能力の向上に努めてみましょう。
出版業界が求めている人物像は上記のようになっています。この中に自分に身に付いていないものがあったとしても大丈夫です。
出版業界の経験者が生きる特性により、本に関わる仕事をしていれば入社できる可能性が十分にあります。
電子書籍や活字離れによる出版業界の低迷は現在も続いています。しかし、低迷が続いているからといって就職先として人気がないわけでもありません。むしろ出版業界への就職は中途採用を強化している事実から新卒の入社は困難を強いられており、何十倍もの倍率を誇ります。
出版社で働きたいと思っている人はご紹介してきた求める人物像を参考に、それに近い人間へと成長する必要があるでしょう。ただし1回入ってスキルを積めば転職しやすい環境でもあります。
ぜひ今回ご紹介した出版業界が欲している人物を参考に、自分自身のスキルを磨いて業界への扉を開きましょう。